企業で吸収合併が行われる理由は?得られるメリットは何?

2019.01.07

吸収合併という言葉を聞いたことはありますか?吸収合併と聞くと、マイナスイメージを持つ人は少なくありません。合併で多く活用されているのは新設合併ではなく、吸収合併です。その理由については、吸収合併のメリットにあります。吸収合併にはどんな特徴があり、どうして多く活用されているのでしょうか。そこで今回は、吸収合併とはどんなものなのか、売り手企業と買い手企業に分けてメリットとデメリットを詳しくご紹介します。

1.吸収合併とは一体どのようなもの?

吸収合併とは、売り手企業は消滅して買い手企業が存続する合併のことをいいます。また、消滅する売り手企業の権利義務のすべてを、買い手企業に承継させることが特徴です。そのため、買い手企業は資産や負債、契約上の地位などを売り手企業からそのまますべて引き継ぎます。さらに、吸収合併は買い手企業が売り手企業に、対価として株式を交付するのも特徴です。

2.吸収合併が多く行われているのはなぜ?

吸収合併は新設合併と比べると、売り手企業が買い手企業に取り込まれるので、マイナスな印象を持たれがちです。しかし、日本のM&Aでは吸収合併の割合が大きいです。マイナスな印象を与える吸収合併が、なぜ新設合併よりも活用されているのでしょうか。その理由は、登録免許税と関係しています。合併するにあたって、吸収合併や新設合併のどちらを活用しても、コストがかかるのは当然です。ところが、吸収合併を活用すれば新設合併に比べて余計なコストがかかりません。

吸収合併だと、登録免許税は増えた資本分の0.15%です。一方、新設合併は登録免許税の課税対象が変わるため、新設会社の資本金に対して0.15%になってしまいます。つまり、新設合併だと課税対象が大きくなるので登録免許税がそのぶんだけ増えてしまうのです。そのため、余計なコストをかけないためにも吸収合併が多く活用されています。ほかにも、吸収合併は新設合併よりも手間が少なく、メリットも新設合併とあまり変わらないなどが活用される理由に挙げられます。吸収合併のメリットとデメリットについて、次の段落で詳しく見ていきましょう。

3.吸収合併によるメリットとデメリット

ここでは、吸収合併を活用することで得られるメリットと、デメリットについて詳しく説明します。売り手企業と買い手企業のメリットとデメリットを比べて、吸収合併が多く活用されている理由を深く見ていきましょう。

3-1.吸収合併する側とされる側のメリット

売り手企業のメリットは3つあります。1つ目は、会社にかかわる内容をすべて引き継ぐことができることです。吸収合併は、売り手企業が買い手企業にすべての権利義務を引き継ぐことが特徴になります。そのため、不要な資源や負債なども吸収してもらえるのです。2つ目は、安心して社員を任せられることです。吸収されるので、買い手企業と同じ法人になり、親会社と子会社という区別がありません。そのおかげで、吸収合併後も社員の自尊心を傷つけることなく、働きやすくなります。3つ目は、企業価値が向上することです。買い手企業のブランドを活かし、これまでの商品やサービスの売り上げをアップさせることができます。吸収合併は合併後に買い手企業と同じ法人格になるため、企業価値が上がることにより恩恵を受けることが可能です。これは、売り手企業にとって大きなメリットと言えます。

続いて、買い手企業のメリットも3つあります。1つ目は、企業規模が大きくなり、市場支配力や交渉力が高まることです。これまでよりも企業が大きくなることで、1社での支配力と交渉力がアップするというスケールメリットが得られます。2つ目は、人材やノウハウの有効活用が行えることです。買い手企業はM&Aにより、コストを削減して売り上げをアップさせるなど、多くの相乗効果を期待できます。3つ目は、資金調達が不要なことです。株式の交付が認められている吸収合併では、買収資金が不要になります。しかし、ベンチャー企業のような上場企業でない場合は、現金での支払いを求められることもあるのです。理由は、売り手企業が株式を受け取った際に現金化に困ります。そのため、上場企業ではない場合は現金での支払いがある可能性があることを覚えておきましょう。

3-2.吸収合併する側とされる側のデメリット

売り手企業のデメリットは2つあります。1つ目は、統合作業を速やかに行わないと社員が不安を抱きやすいことです。吸収合併後、親会社と子会社という区分はありませんが、一緒に仕事をする環境を整える必要があります。企業での文化の違いが大きいと統合が難しくなるので、速やかに統合作業を行うことが必要です。特に、個性の強い企業同士の統合は難しいため、吸収合併前に対策を考えておきましょう。2つ目は、株式の現金化が難しいことです。吸収合併は買収資金が不要な代わりに、対価として株式を引き渡します。しかし、上場ではない企業の株式を現金化することは難しいことです。そのため、上場企業ではない場合は株式の交付とは別に、現金で交渉する必要があると考えられます。

続いて、買い手企業のデメリットは2つあります。1つ目は、運営ルールを統合する作業に時間と手間がかかることです。親会社と子会社という区分がない代わりに、一緒に仕事をする環境を整える必要があります。そのため、賃金体系や休日休暇などを統合しなければならないのです。買い手企業にとって吸収合併後の統合作業は、大きな負担と言えます。2つ目は、不要なものまで引き継いでしまうことです。吸収合併は、買い手企業が売り手企業のすべての権利義務を引き継ぐことになっています。そのため、負債や簿外資産などリスクのある引き継ぎをする可能性があるのです。買い手企業は、買収企業の調査を行い、できるだけリスクの少ない状態での合併をしましょう。

4.吸収合併を行うべきケースとは?

次のような3つの場合には、吸収合併がおすすめです。1つ目は、会社を大きくしてコストを削減したい場合。吸収合併を行うと、購買などの調達や物流のコストを削減することができます。また、同じ部門を無くすことができ、1社としての支配力と交渉力を上げることが可能です。そのため、会社を大きくしてコストを削減することができます。2つ目は、自由な人材配置や2社のノウハウを有効に活用したい場合です。吸収合併を行うと、親会社と子会社という立場がないので、自由に人材配置をすることができます。

そのため、2社の人材やノウハウをうまく活かすことで、会社に大きな相乗効果をもたらすことが可能です。最後3つ目は、つながりのある会社同士を1つにまとめたい場合。吸収合併で、つながりのある2社の会社を1つにすると売上アップが期待できます。また、2社どちらかの顧客層を見込んで、新たなサービス展開も可能です。よって、吸収合併により期待以上の売り上げアップを図ることができるようになります。以上の3つのことを望んでいる場合には、吸収合併がおすすめです。

5.吸収合併に必要な手続き

吸収合併の手続きは7つの手順が必要です。1つ目は、吸収合併契約を締結することです。吸収合併を行うには、双方の会社で合併の契約を結ぶ必要があります。2つ目は、株主への通知と公告です。この手続きは、多数決で合併するかを決めることができる代わりに、合併を反対する株主を保護するのに必要な手続きとなります。3つ目は、債権者への催告と公告です。合併を行う前日の1カ月前に、知れている債権者に個別の催告と、合併する旨などを官報に公告する必要があります。4つ目は、株主総会の承認です。株主総会の議決により、合併の効力が発生する前日までに、合併契約の承認を受ける必要があります。

5つ目は、変更登記と解散登記です。これは、合併の効力発生日から2週間以内に消滅する会社は登記を解散し、存続する会社は変更登記を行う必要があります。6つ目は、事前開示書類の備置することです。合併契約や、対価の相当性などの内容を記載した書類を作成して本店に備え置く必要があります。7つ目は、事後開示書類の備置です。存続会社は消滅会社から承継した権利義務の内容を記載した書類や電磁的記録を、本店に備えておく必要があります。以上の7つが最低限必要な手続きです。また、6つ目と7つ目については、合併効力発生日から6カ月間備え置く必要があります。

6.企業規模の拡大には有効的な手段!

吸収合併は会社の規模が大きくなるだけでなく、コスト削減にもなります。また、人材が増えるのでノウハウをこれまでの商品やサービスに活用することで、相乗効果が期待できるのです。そのため、吸収合併は双方の会社にメリットがあり、親会社と子会社という区分がないので働きやすい環境が作れます。存続会社は1社としての支配力や交渉力が上がり、消滅会社はすべての権利義務を継承できるので、お互いに内容の良い合併です。デメリットも少なく、余計なコストもかからないので吸収合併はおすすめの合併方法となっています。