事業譲渡を行う前に!経営者が把握しておくべきメリットや手続きの内容

2019.01.07

「高齢のため経営から退きたいが後継者がいない」「事業を止めてしまうとリタイア後の生活資金が心配」「技術力はあるが会社を発展させるための資金が不足している」などの悩みを抱えた経営者も多いのではないでしょうか。廃業を考える前に、事業譲渡という選択を検討してみてはいかがでしょうか。事業の全部または一部を第三者に譲渡することで、自分の育てた思い入れのある事業の存続や現金の調達が可能になります。しかし「事業譲渡は一体どのように行ったら良いのだろうか?」「デメリットはないのだろうか?」など気になりますよね。事業譲渡を検討するために知っておきたいメリット・デメリットや手続き方法などを紹介します。

1.そもそも事業譲渡とは一体?

事業譲渡とは、会社の事業の一部または全部を第三者に譲渡する行為を意味します。譲渡する側の企業が、一部の事業のみを譲渡した場合、手元に残った事業はそのまま継続するため、企業自体は存族することができます。譲渡の対象となるのは、工場・店舗などの有形固定資産や売掛金・在庫などの流動資産に加え、営業権(のれん)、人材、知的財産やブランド、顧客リストなどの無形資産、債務も含まれます。

ただし、従業員との雇用契約や取引先との契約については、譲渡を受ける側の受け入れ同意と従業員や取引先の同意が必要になります。また、権利義務関係は当事者間の契約で、個別に引き継がなければならない点にも注意しましょう。なお、個々の事業用財産の譲渡については事業譲渡とは言いません。

2.株式譲渡との違いは?

事業譲渡に似たもので、株式譲渡というものがあります。株式譲渡とは、経営権の移転を目的として株式を譲渡することです。株主譲渡においては、事業そのものは譲渡しません。取引主体は株主である経営者個人です。一方、事業譲渡は事業そのものの移転を目的とし、事業に関わる資産などを譲渡することを指します。取引主体は法人になります。

デューデリジェンスなどのプロセスについては基本的に同じですが、契約内容や必要な手順が違います。不採算事業やノンコア業務を切り離し、採算性の高いコア業務に資源を集めたい場合や事業の現金化を行い会社の資金を増やしたい場合などは、事業譲渡を選択すると良いです。株主譲渡と比べると手続きなどが煩雑ではありますが、会社に残しておきたいものなどを選別したいなどのニーズがある場合におすすめです。

3.事業譲渡を行う際のメリットとデメリット

事業譲渡には、譲渡をする側の企業と譲渡をされる側の企業、双方にメリットとデメリットがあります。各企業の状況に照らし合わせ、事業譲渡のメリットだけではなくデメリットも含めて理解することが重要です。では、メリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。

3-1.事業譲渡の双方のメリット

事業譲渡における売り手側企業のメリットとしては、現金の調達、事業の整理などがあります。何と言っても、事業譲渡(売却)により、現金を得ることができます。会社を存続させつつ、不採算事業など一部の事業のみを譲渡が可能な点もメリットのひとつです。また、事業譲渡するかどうかについては、債権者に対しての通知義務はありません。ただし、債権が移転することに関して個別同意は必要になります。

一方、買い手企業側のメリットとしては、新規事業を立ち上げる際のノウハウや優秀な人材などの確保があげられます。事業譲渡においては、欲しい資産、人材、取引先などの契約を選んで引き受けることが可能です。また、貸借対照表上に記載されていない簿外債務を引き継がなくてもよいのでリスクの把握が容易です。営業権(のれん)は5年間償却の損金扱いにできるので法人税の節税になります。

3-2.事業譲渡の双方のデメリット

事業譲渡を行う際の、売り手企業側のデメリットとしては手続きの煩雑さ、資産や雇用契約などの移転の手間、譲渡益税の発生などが挙げられます。手続きに関しては株主総会の特別決議が必要になります。資産の譲渡契約に加え、従業員や取引先との契約についても個別の対応が必要になります。また、事業譲渡により譲渡益が発生した場合は、譲渡益に法人税が課税されるため株式譲渡と比較すると高い税率になる可能性があります。負債の取り扱いにも検討が必要で、買い手企業の受け入れ同意、債権が移転した場合は債権者の同意も不可欠です。

買い手企業側のデメリットとしては、手続きや契約の手間、資産取得による消費税の発生などがあります。引き継いだ取引先や従業員に対しては個別に契約をしなければいけません。各資産の所有権や地位の移転などの手続きについては、不動産登記だけでなく特許権など一つひとつ行う必要があり、時間と手間がかかります。事業に関連する許可などが必要な場合は、自ら申請して取り直さなくてはいけません。

4.事業譲渡に必要となる手続きとは?

事業譲渡を行う際に必要な手続きとしては、取締役会決議、事業譲渡契約の締結、株主総会の特別決議、事業譲渡の通知、反対株主の株式買取請求手続きがあります。事業譲渡では重要な財産が移転されることが多いため、取締役会設置会社においては、会社取締役会決議が必要となります。譲渡先が見つかり交渉を経て相手先と基本的な合意ができ次第、事業譲渡契約を結びます。

また、株主総会での特別決議も必要となり、議決権の行使ができる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、かつ出席者の3分の2以上が賛成した場合に決議されます。株主総会での決議が必要な理由は、事業譲渡が会社の将来を左右する重要な案件であり株主の利害に重大な影響があるからです。株主総会での決議後は、株主に効力発生日の20日前までに、通知などで知らせる手続きも発生します。決議に反対の株主については、株式買取請求の手続きが効力発生日の20日前から前日までにできます。

譲渡を受ける側の会社としては、原則として株主総会の特別決議は必要ありません。なぜなら、受け取り企業側では、現在ある事業が制限されるわけではないため、売り手側企業に比べ株主保護の必要性が高くないことが理由です。ただし、売り手側企業の事業を全部譲渡される場合、かつ譲渡を受けることにより交付する財産の帳簿価格の合計が純資産の5分の1を超える場合には、株主総会の特別決議が必要となります。

5.事業譲渡の流れとは?

事業譲渡の流れとしては、買い手となる企業を選択し、買い手側意向表明書を受け取ります。譲渡先を探す際には、M&A専門の会社などにお願いする方法もあります。興味を持つ会社が現れたら、経営陣同士で面談をして条件などをすり合わせ、求める条件などにより近い会社を相手先として選びます。その相手先と交渉を経て意向表明書をもらい、取締役会の承認を経て基本合意書を締結します。

買い手会社より依頼を受けた専門家がデューデリジェンスなどの買収調査を行います。調査内容は買収価格の算定など広範囲にわたります。最終的な交渉が終わり、取締役会で決議されたのち、正式な事業譲渡契約を結びます。株主総会の特別決議が必要な場合は株主総会を実施し、決議がされた後に株主への通知をします。最後に、事業の引継ぎや移転に関する手続きを行います。

6.譲渡したい事業を選択できる!

事業譲渡における経営者側の大きなメリットとしては、譲渡したい事業を選べることです。必ずしもすべての事業を譲渡しなければならないわけではないため、一部を譲渡して会社自体は存続させることが可能です。また、譲渡先企業との合意内容にもよりますが、従業員の継続雇用や長年付き合ってきた取引先への取引継続も可能になることもあります。経営者としても事業の売却により現金が手に入るため、引退後の生活資金などにも充てられます。手続きなどは煩雑ではありますが、中小企業の場合や移転する事業の規模が小さい場合は、それほど手続きの手間はありません。行っている事業の状況などに照らし合わせて、事業譲渡を検討してみてください。